CHAiroiPLIN インタビュー

公開日 2018年03月23日

CHAiroiPLIN インタビュー

2015年に星のホールで、ブレヒトの名作『三文オペラ』を大胆なまでに演出し、
その圧倒的なダンスパフォーマンスで、大きな反響を呼んだチャイロイプリン!
そのチャイロイプリンが、太宰治の小説「人間失格」「失敗園」のダンス上演に挑む、
「太宰治作品をモチーフにした演劇公演」シリーズ第14弾『ERROR』。

公演を前に、振付・構成・演出・出演のスズキ拓朗さんと、出演の清水ゆりさんに、 お話を伺いました。

 

「ERROR」というタイトルに込められた意味を教えてください。

スズキ拓朗スズキ拓朗(以下、拓朗) 今回、僕が、メインモチーフ作品として『人間失格』と『失敗園』を取り上げることを決めた後に、劇団のメンバー全員で会議をしたんですね。その時、タイトルについても話し合ったのですが、なかなか決まらなくて、そしたら、あるメンバーがふと「『ERROR』がいいんじゃない?」と口にして、「あっ、それいいね」という感じで決定しました。

 

タイトルの決定に、劇団員の皆さんが関わられるのですね。

拓朗 最近は、そういう決め方が多いですね。もともとは、原作物を扱う場合は、その原作のタイトルをそのまま使っていたのですが、なんとなく、堅く思われてしまうような気がして、ある時期から別のタイトルを付けるようになり、劇団員の皆で、意見を出しあって決め始めました。僕自身、『ERROR』というタイトルが俎上に載った瞬間に、舞台上に溢れる音が聞こえてきた気がして、体が自然に動いていく予感が膨らんで、とても気に入ったのを覚えています。

 

太宰治作品は、読んでいらっしゃいましたか?

拓朗 『人間失格』や『走れメロス』など、代表的な作品を幾つか読んでいた程度でしたが、「踊る小説」というシリーズを上演している関係で、過去には芥川龍之介や、江戸川乱歩や、韓国の金裕貞などの小説を手掛けていたので、今回、太宰治作品を「踊る小説」として舞台化できることを、とても嬉しく思っています。

 

読み返されてみて、太宰の小説はいかがですか?

清水ゆり拓朗 言葉のまわし方がとても綺麗だなと。小説の一文を、そのまま歌にして踊り出せるのではないかと思うような滑らかな文章が多くて、興奮を覚えました。なので、小説の良さを最大限生かしながら、インスピレーションが湧き上がるような舞台にできればと思っています。

清水ゆり(以下、ゆり) 私も、久しぶりに読んでみて、文章が直接的ではなく、余韻というか、少し遠回りをして伝わってくる感じが、とても心地よかったです。私たちの舞台作りも、より良い作品を目指して、あえて遠回りすることを厭わずに作ることが多いので、心の中に、スーッと入ってきたように思います。太宰の小説を読み進めていった時の、どのように結末にたどり着くのだろうというワクワクする感じを、舞台上でうまく表現できたらと、とても楽しみに思っています。

 

どのような作品になりそうですか?

拓朗 太宰治は、植物、特に花にとても興味のあった人のようで、全作品中、147種もの植物を使い分け、618回使っているそうです。そして僕自身、花を始めとした生物がとても好きなので、植物や野菜が主人公である『失敗園』の世界が、やがて『人間失格』へとカチッと合わさっていくような舞台になればと思っています。

 

作品のメインコピーは『いつでも人は前に向かって「失敗」する。』ですね。

CHAiroiPLIN インタビュー拓朗 『ERROR』というタイトルから想像力を働かせていく中で、自分たちはまだまだ失敗を怖れず、たとえ失敗するとしても前を向きたいなと思ったんですね。よく言う言葉ですが、やらずに後悔するよりも、失敗を恐れずやってみることが大事だと。作品のアイデアが浮かんだ時に、無理かなと思っても、取りあえずやってみて、それから考えることを心掛けたいなと。

ゆり 劇団員それぞれが得意なことは何かを、他のメンバーがはっきりと把握しているので、その信頼感によって、たとえ一時的に失敗しても、劇団としての軸は揺らがないので、皆がやれることをしっかりとやっていれば、必ず形になっていくという思いは共有していると思います。だから、周りから見たら失敗でも、私たちにとっては、作品作りに欠かせないチャレンジということになるんです。

拓朗 僕らの稽古は本当に、“作っては壊し、壊しては作り”なんですね。だけど仮に「おそらくこのシーンは、ボツになるんじゃないか」と思っても、決して手を抜かずに真剣に作ります。だから、最終的にチョイスされなかったシーンがたくさん出てくるのだけど、それを「これは次の公演に取っておこう」とは、決してならないんですね。チョイスされないシーンは、そこで終わりと。消滅すると。ある意味それは「失敗したシーン」といえるのかもしれないけれど、そういう(チョイスされない)シーンがたくさん生まれるくらいでないと、本当に面白い作品は生み出せないように思うんです。そういう前向きな失敗の繰り返しの中から、良いシーンだけを選んでいくんだと皆が思っていることが、チャイロイプリンの持ち味ではないかと思っています。

 

稽古中も、劇団メンバーのアイデアをどんどん採り入れていらっしゃいますね。

拓朗 そういう作り方が、僕らにとって本当に自然なんですね。だから振付なども、一応きっかけは私が作りますけど、それをもとに、メンバーの皆がいろんなアイデアやダンスを生み出してくれて、良いと思ったらすぐに採用します。例えばですが、ゆりは、いつも音楽を担ってくれているのですが、稽古初日には自主的に、原作に合わせたオリジナルのテーマ曲を、作ってきてくれたりします。

清水ゆりゆり ピアノは3歳からやっているのですが、チャイロイプリンのメンバーになるまでは、オリジナル曲を作るなんて発想は無かったんです。でも、次回公演で取り上げる小説や戯曲や童話を読んだり、皆で意見を出し合ったりしているうちに、「今回の舞台に合うのは、三拍子かな?それとも、アップテンポがいいかな?」なんて思いが広がっていって、いつしか毎回、オリジナルのテーマ曲を作り始めてるんです(笑)。確かに、拓朗さんから頼まれた覚えは無いですね(笑)。

拓朗 大学時代からで、かれこれ10年以上と付き合いも長いですから、作品ごとに、僕のイメージを的確に掴んだ曲を、毎回作ってきてくれますね。

ゆり 今回の作品の「花」や「植物」というイメージになぞらえると、メンバーの皆から『種』をもらって、その『種』を音楽によって『発芽』させる感じかなと思います。今回のテーマソングが、どんな曲になるかも、楽しみにしてもらえたら嬉しいです。

 

大学時代からとのことですが、お二人は、劇団の創立メンバーですよね。

ゆり 拓朗さんは、桐朋学園芸術短期大学演劇専攻の、一学年上の先輩となります。

拓朗 同じ専攻でしたし、ゆりのことはずっと知っていましたが、僕が専攻科2年の時に、学園祭で何か公演を打とうと思い立ちまして、彼女を誘ったのが最初の共演です。最終的に10人くらい出演してもらって公演したのですが、当時の桐朋学園では、ストレートプレイを目指す人が多く、ダンスもヒップホップ系が中心で、コンテンポラリーダンスの集団は珍しかったんですね。だから新鮮だったのかも分かりませんが、とても評判が良かったのを覚えています。ただ、あの時はまさか、その後も続けるなんて、まして10年以上も続くなんて、思いもしませんでしたね。

 

その時からチャイロイプリンという団体名だったんですか?

ゆり そうですね。でも決まるまで、結構悩みましたよね?(笑)

スズキ拓朗拓朗 僕がチャップリンが好きだったので、そこから派生した名前がいいなとは思っていたのですが、どの候補名もしっくりこなくて。そんなある日、なぜか学内に『プリンの自販機』が設置されたんですよ。「えっ、プリンって自販機で売るっけ?」と驚いて、ゆりに「自販機で、茶色いプリン、売ってたよ!」と言った瞬間に「あれ?今の良くない?」と(笑)。「チャップリン、チャップリン、チャイロイプリン」と(笑)。

ゆり それ、はっきり覚えています(笑)。自販機の話をしてると思ったら「あれ?」って(笑)。

拓朗 大混迷してたのに、決まる時って、こんなもんなんですねよね(笑)。

 

その後、大学を卒業されて、活動を続けられますが、劇団初期の思い出を教えてください。

拓朗 作品作り自体では、それほど揉めたりはしませんでしたが、「そういう言い方は良くない」とか「稽古中は暗い顔をしないようにしよう」とかは、言い合ってましたね。

CHAiroiPLIN インタビューゆり あの頃、そういう思いを溜めずに言い合えたから、今まで続いているように思います。今思うと、とても大事な時期でしたね。

拓朗 「気が合う」というのとはまた違って、「気を合わすことができるかどうか」というのは、一緒に作品を作っていく上では、とても大事な気がします。

ゆり 最初に一緒に作品を作り始めた頃から、「体を記号化する」とか、今も拓朗さんがよく口にすることはずっと言っていましたし、すごく大事にしている根っ子の部分は、その時から変わらないなと思います。私自身、チャイロイプリンに参加するまでダンスを本格的にやっていたわけではないのですが、公演を重ねるごとに、コンテンポラリーダンスの可能性というか、いろいろなことができるんだなという思いに、どんどん惹かれていった感じですね。拓朗さんは最初から、メンバーのアイデアを「それいいね」と柔軟に採り入れる方法を取っていましたので、いろいろなアイデアが、足し算どころか、掛け算になることもあって、稽古はいつも楽しかったです。

 

三鷹市芸術文化センター星のホールでは、2015年に『三文オペラ』を上演していただきました。

ゆり 三鷹駅から三鷹市芸術文化センターまでの道すがら、自作のテーマソングを聴きながら歩いて来るのが大好きでしたし、公演中、客席に向かって声を出したり、演奏したりする緊張感が、とても嬉しい毎日でした。

拓朗 あの時点で、自分、そして劇団としてやりたいことをすべてやり尽くしたような、まさに集大成のような公演でした。ものすごく大変でしたけど、いつかは再演したいと思っている、大事な作品ですね。

 

作品を作る上で、大事にしていらっしゃることを教えてください。

CHAiroiPLIN インタビュー拓朗 まずは、チャイロイプリンはカンパニー(劇団)であるということですね。ダンス公演においては、作品ごとに出演者に集まってもらうプロデュース公演が多いですが、自分たちはカンパニーという道を選び続けてきましたから、カンパニーという強度を武器にして、メンバー全員のアイデアで作るという強みを、生かしていきたいです。あとは、「誰も分らなくてもいい」という芸術の提示の仕方も僕自身は好きなのですが、やはりチャイロイプリンは、一人でも多くの人に楽しんでもらえるものを、もしもできるならば、すべてのお客様に楽しんでもらえるものを、目指したいなと思います。

ゆり チャイロイプリンのメインは、やはりダンスですが、言葉や音楽や美術や映像など、いろいろな要素からスタートして、ひとつひとつ見つけながら太い幹になっていくように、作品を作っていくことですね。『人間失格』の中に「自分の幸福の観念と、世のすべての人たちの幸福の観念とが、まるで食いちがっているような不安」という一文がありますが、私たち自身が幸福と思えるものが、踊り、言葉、音楽などなど、いろいろな要素のどこから生まれてくるかにすごくワクワクしていて、メンバー全員で、全力で意見を出し合って、回り道しながら作品にたどり着きたいなと思います。

 

では、最後にお客様へのメッセージをお願いします。

ゆり 花や植物がメインになる作品になりそうなので、季節も春ということで、一番ふさわしい時期に公演できるのではと思っています。会場までの道すがら、植物の息吹を感じていただいたなら、帰り道には、その同じ植物が一段と輝いて見えるような、面白い作品を作れたらと思います。ぜひ観に来てください。

拓朗 太宰の小説のダンス化ということで、自分には理解できないんじゃないかとか、内容的に難しくて楽しめないのではと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、皆でアイデアを出し合って、誰もが楽しめるエンターテインメント作品に仕上げていければと思っていますので、あまり構えずに、気軽に観に来てもらえたらと思います。「あっ、太宰って、こんなに面白いんだ」「こういう捉え方もできるんだ」と、楽しんでもらえたら、本当に嬉しいです。お待ちしております。

 

本日はありがとうございました。

インタビュアー 森元隆樹(当財団 演劇企画員)
2018年 1月12日 星のホールにてインタビュー

CHAiroiPLIN『ERROR』~踊る小説4~公演ページ

CHAiroiPLIN『ERROR〜踊る小説4〜』