公開日 2023年04月08日
<企画展示>
太宰治の弟子と言えば、一番に名が挙がるのが田中英光ではないでしょうか。二人の師弟関係は、田中が同人誌に発表した「空吹く風」(昭和10年)でその才能に惹かれた太宰が、好意的な葉書を送ったことに始まります。昭和15(1940)年に太宰との対面を果たした田中は、以後、三鷹の太宰宅を訪れては指南を受けました。ともに無頼派を象徴する存在ではありますが、田中は会社勤めで家計を支えながら度重なる従軍を体験し、太宰とは対極の環境で創作を続けた作家でもありました。戦後、社会情勢に翻弄されながら生きた田中にとって、師の喪失は追い打ちとなりました。太宰が亡くなった翌年11月、太宰の墓前で自殺を図り、愛弟子という存在を世に再認識させるかのような最期を遂げています。
本展では、太宰の手ほどきで池谷信三郎賞を受賞し、華々しいデビューを飾った「オリンポスの果実」や「われは海の子」などの田中の初期作品をはじめ、太宰が田中に贈った結婚祝いの色紙や、連絡先が記されたアドレス帳、太宰の死後に田中が発表した「太宰治さんのこと」「如是我喚」など、師の死を痛烈に悼んだ弟子の想いが伝わる作品を紹介します。
本年は田中英光の生誕110年。太宰治と田中英光の交友をお楽しみください。
*「文学界」 昭和15年9月 / 文藝春秋社
はきだめの花 かぼちゃの花 わすれられぬなり
わがつつましき 新郎の心を 昭和12年2月 / 津島家寄託
太宰治が田中英光の結婚祝いに贈った色紙
*原稿を太宰に持ち込んだ当時、作品名は「杏の実」だった。太宰によって改題された「オリムポスの果実」は「文学界」に発表され、田中の出世作となった。
【MITAKA ARTS NEWS】
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