川上喜三郎(建築家・彫刻家)風のホール・ロビー

「Crystal Chord」

川上 喜三郎「Crystal Chord」

作品のタイトル "Crystal Chord" の Chord は弦楽器の "弦" "和音" のことです。様々なパターンに張られた五重のステンレスの糸は重層する立体五線譜(MUSIC)で、光に反応して輝く27000個のガラス玉は音符として構成されています。

開館するセンターの特徴的なおおきな円弧の屋根は、巨大な弦楽器の共鳴箱をイメージしています。外観が楽器であるように、内部にも光の方向、強度が変化する自然光、人工照明に感応する音楽、楽譜をこの4面のレリーフ "Crystal Chord" に託しました。

また、私達に公平に与えられた美しい自然の恵みのごとく一部、無限に変化する雲、霧、オーロラ、氷柱、虹などは光に反応する水滴そのものなのです。その水滴が自然の摂理によって形を変え私達に種々な感銘を与えてくれる訳です。その効果をここでは "Crystal Chord" ガラス玉に期待しています。

このレリーフを正面からだけでなく、椅子に座って下の方から見上げる時、また真横から透視する時、黄や青のガラス玉が重なり合い顕微鏡で見えるミクロの世界、或るいはエレクトロニクス、立体都市モデル、マクロの世界をも垣間みることができそうです。
センターを利用される方々の自由な発想、印象を期待します。

ものづくりに携わっている私にとって自然に限りなく近づきたい、自然から学びたい、という願いは過去25年間日本を離れ英国ロンドンで生活し様々な国を旅する過程で育まれたようです。

(平成7年11月)

川上 喜三郎(建築・彫刻家)

1945年生まれ 早稲田大学建築学科卒
1972年~1985年 ロンドン市カムデン区役所建築設計部勤務
ロンドン三菱銀行、横浜ラポール、東京都現代美術館などに作品設置
王立英国建築家協会会員
ロンドンAAスクール(建築大学)教授