『CHAiroiPLIN』インタビュー

公開日 2024年02月10日

『CHAiroiPLIN』インタビュー
今回、落語の世界で”大ネタ“と言われる「らくだ」を、題材に選ばれた理由は?
スズキ拓朗
スズキ拓朗

スズキ拓朗(以下拓朗) 前回の<おどる落語>で取り上げた「あたま山」は、とても短い落語で、10分~15分くらいで語られることの多い噺なのですが、それを1時間10分に広げて上演しました。なので今回は、元々長い落語にチャレンジしてみたいと思っていまして、いくつか候補が出たのですが、最終的に「らくだ」になりました。落語家さんにもよりますが、「らくだ」は短くても40分、長く構成して語られる人は1時間を超えることもあります。その長い噺を、どうダンスにしていくか、僕たち自身もとても興味が湧いています。見どころとしては、やはり、死体が「かんかんのう」(江戸時代に、庶民の間で流行(はや)った曲)を踊るシーンを、チャイロイプリンがどんなダンスシーンにするかですね。楽しみにしてほしいと思います。

鳥越勇作
鳥越勇作


鳥越勇作(以下勇作) 題名にもなっている「らくだ」ですが、乱暴者で長屋の皆から嫌われている存在の男が、なぜ「らくだ」と呼ばれていたのかを少し調べてみたら、江戸時代に、動物の「らくだ」が異国から連れて来られて、両国あたりの見世物小屋で披露され、大評判だったらしいんです。当時の江戸の人から見れば、初めて見る「らくだ」は大きくて、姿かたちも変わってて、畏怖の象徴だったのかもしれません。それで、乱暴者の男を「らくだ」と呼んだのではないかと。

拓朗 「かんかんのう」も「らくだ」も、当時の最先端のトレンドだったのかもしれないね。それをどうダンスにするか、ワクワクしています。

 
チャイロイプリンは、小説や戯曲や童話など、さまざまなジャンルの作品をダンスにされてますが、落語をダンスにする際に、他のジャンルと違う点はありますか?
スズキ拓朗

拓朗 やはり「笑いが多い」点を、どうダンスにしていくかが、特徴かなと思います。落語は、人生を俯瞰(ふかん)して捉えていて、一見悲劇と思われることも、大きく包み込んで喜劇にして、そこに人間の愛しさや温かさを描いている噺が多いと思います。逆にチャイロイプリンは、人生の一瞬を顕微鏡で見つめて、ダンスにして拡大している感じかなと思いますね。だから、笑えるシーンはもちろんのこと、笑いの底にあるやるせない思いとか、うまくいかなかったことへの眼差しといったものを、ダンスで表現したいと思います。

 
お二人の役どころを教えてください。

拓朗 エリザベス・マリーは、主人公である屑屋(くずや)の久六(きゅうろく)役です。この久六は気が弱く、最初は脅されてばかりいるのですが、むりやり飲まされたお酒で態度が豹変し…という役どころです。そして、「らくだ」の兄貴分で、最初久六を脅しまくる熊五郎(くまごろう)役を、清水ゆりが演じます。「らくだ」は、登場人物がすべて男性なので、主人公2人を女性にしたら面白いかなと。

エリザベス・マリー
エリザベス・マリー
(リズ)

エリザベス・マリー(以下リズ) やりがいしか感じません!(笑)

拓朗 リズは、かわいらしいタイプなのに、実は芯がものすごく強い。そのギャップが、途中から豹変する久六につながるんじゃないかなと思います。

リズ 嬉しいです!チャイロイプリンでは、かわいい女性の役を演じることが多いので、今まで与えられなかった役をもらえると「よっしゃー!やったろうじゃないかあ!」と、気持ちが乗ってきます。

拓朗 弱さの中に秘めた強さや、強そうに見える人の孤独な胸の内とか、すべての人が抱えているであろう思いを、演じてもらえたらと思います。そして、勇作さんは、八百屋か、同じ長屋の住人の、どちらかをと思っています。

リズ 八百屋、似合いそ~(笑)。

勇作 どちらの役でもどんと来いですが、確かに八百屋、少し惹(ひ)かれますね(笑)。
どちらの役になっているかは、見てのお楽しみということで(笑)。

『CHAiroiPLIN』インタビュー
『CHAiroiPLIN』インタビュー
 
今回も連動企画として『踊る設計図』を開催し、前回同様、桂宮治さんに落語(今回は「らくだ」)を語っていただきます。前回ご一緒した際の、宮治さんの印象を教えてください。
鳥越勇作

勇作 とにかくパワフルで、コミュニケーションをどんどん取ってくださって。さらに、本番前に私服から和服に着替えられるとエネルギーが一段上がる感じで、落語家さんってすごいなあと思いましたね。

拓朗 出番の前に、舞台袖でスタンバイしている時、前説をしている森元さん(当財団職員)の真似をずっとされていて、それが面白過ぎて(笑)。おかげで僕も、森元さんの真似ができるようになりました(笑)。

勇作 「あたま山」の公演を観てくださったのですが、すごく気に入ってもらえて。

拓朗 「落語をお芝居にした舞台を何回か観たことがあるんだけど、どの舞台もだいたい想像の範囲内だった。けれどチャイロイプリンの「あたま山」は、完全に想定外というか、想像をはるかに超えた舞台だった。ちょっと涙が出たよ。」って仰ってくださって。嬉しかったですね。

 
「あたま山」(2022年4月上演/三鷹市芸術文化センター星のホール)の思い出を教えてください。

勇作 観てくださった方はご記憶あると思うのですが、ラストシーンで、“大ぜり”から、ゴミの山が登場するんです。そのゴミの山は、舞台上でそれまで使っていた小道具たちなのですが、これを積み重ねるのが大変で。お客さんに何かやってるなと思われないように、音を立ててはいけないし、時間もあまりないし。だから積み上げてる時に、舞台上では歌うシーンがあったのですが、結局、僕は歌に参加できなくて(笑)。

拓朗 ボイストレーニングにまで通ってくれたのにね(笑)。

勇作 そうなんですよ(笑)。で、大人数で歌ってるから、みんな僕も歌ってると思って「歌のシーン良かったよ」って言ってくださるんだけど「僕、そのシーン出てないし、歌ってないから」と言えなくて(笑)。その頃、奈落の底で、舞台監督さんや美術家の人と一緒に、必死にゴミの山を積み重ねてましたから(笑)。

「おどる落語 あたま山」2022年4月  三鷹市芸術文化センター星のホール/撮影:HARU
「おどる落語 あたま山」2022年4月  三鷹市芸術文化センター星のホール/撮影:HARU

リズ 私は出演してなくて、客席で観てたんですけど、ゴミの山が“大ぜり”から登場した時、『おお!』って思いましたもん。そして『これは大変だ』と(笑)。歌のシーン、勇作さんがいなかったのは気付かなかった(笑)。

拓朗 「あたま山」の主人公は、まだまだ使えそうな物を“もったいない”って、なんでも拾ってきちゃう人で、まわりからケチって言われてるんだけど、言い換えると『エコ』っていうかね。なんでもすぐに捨てずに、再利用しちゃえと。チャイロイプリンの舞台小道具も、旗揚げ当初からそういうところがあって、使える物は使ってしまおうと。

エリザベス・マリー

リズ 道端でゴミとか見つけると「これ使える!」って持って帰って、よく舞台の小道具になってたよね(笑)。

拓朗 「あたま山」は、その集大成みたいな感じで(笑)。知り合いの中に、ちょうど引っ越す人が2人いたので、家具やら家電やら本やら、不要な物をいろいろもらってきて。だから、小道具に関しては、ほとんどお金がかかってない(笑)。

 
今回、リズさんと勇作さんは、役者以外の任務も担当されるんですよね。

拓朗 リズは『振付助手』、勇作さんは『ドラマトゥルク』です。リズ自身、既にいろいろな舞台で振付を担当しているし、脳内で舞台空間を立体的に把握する能力が高いので、心強いです。勇作さんに担当してもらう『ドラマトゥルク』とは、戯曲やシーンの構成に関して、助言をくれたりする役割のことで、僕自身、勇作さんのアドバイスを本当に頼りにしています。

鳥越勇作

勇作 意見が違うこともありますが、お互いがなぜそう思うのかを語り合っていくと、見えてくるものがあったりするから、楽しいですね。

リズ 私は普段、無駄なことが大嫌いなんですけど、「そのアイデア、採用しないかもしれないけど、とりあえずやってみよう」という、一見無駄に見えることの中から面白さを探っていくのはチャイロイプリンの持ち味なので。だから、「無駄なことを、効率良く作業するにはどうすれば良いか」という一見矛盾していることを、ぱっぱっぱっと判断して、指示していくのが私の役目かなと。

拓朗 段取りの鬼だからね(笑)。そういうときの計算力は、リズは相当高いです。

 
「らくだ」は、お酒が重要なキーワードとなってる噺ですが、皆さんのお酒にまつわるエピソードはありますか?

勇作 話せるものから、話せないものまであります(笑)。

エリザベス・マリー

リズ お酒が好きな人は、割と多いよね。

勇作 昔、ある公演の打ち上げで、店に着いた拓朗さんが先に飲んでいて、やがて「全員揃ったので乾杯しましょう」ということになった時、すでにアルコールで力の加減がよくわからなくなっていて(笑)、「かんぱーい!」って言った時に、リズの持っていたグラスを思いっきり割って(笑)、リズが手を切って流血しちゃったので病院に行って(笑)。ところが拓朗さんは酔ってるから全然それに気付かなくて、しばらくすると「あれ?リズがいない!リズどこ行った?」って叫び始めて(笑)。

リズ 後からそれを聞いて、「せっかくの打ち上げの席だから、盛り下がるようなことを言うのは止めよう」と気遣いしてくれた皆に感謝しましたね。幸いにして、傷は大したことなかったですし。

拓朗 よく覚えてないのですが…。改めて、すみませんでした(笑)。

勇作 あと、公演で韓国に行った時、お酒が入った拓朗さんがご機嫌で、誰もいない道路で、いきなりマイケル・ジャクソンを踊り始めて。「フォー!」とか言いながら(笑)。

全員 (爆笑)

勇作 そしたら拓朗さんが「僕、マイケル・ジャクソンより、ダンスが上手いんですよ」って言い始めて(笑)。

全員 (爆笑)

 
それは…拓朗さんが中学二年生の頃の話ですか?(笑)
スズキ拓朗

拓朗 三十歳の手前ですかね(笑)。

勇作 ちょっとびっくりしちゃって、「へえ、そうなんですかあ」って言ったら、真顔で「本気で言ってるんですけど」って(笑)。

 
マイケル・ジャクソンへの思いは、今も変わりませんか?(笑)

拓朗 今は・・・勉強させていただいてます(笑)。

 
最後に、お客様へのメッセージをお願いします。

勇作 「らくだ」という噺を調べたり、掘り下げたりすればするほど、現代に通じる、人間関係の噺だなあと思います。それぞれの人間が持っている個性こそが、人間の面白さなんだということを、ダンスを通して、伝えていけたらなあと思います。

リズ チャイロイプリンにしては、登場する人数が少なめなので、その分、ギューっと密度の濃い舞台をお届けできるのではないかと、自分自身ワクワクしていますし、皆さんにもワクワクして観てほしいです。

拓朗 「らくだ」の中に出てくる、江戸時代に流行った“かんかんのう踊り”をチャイロイプリンがどう踊るか、楽しみにしてください。そして、ダンスシーンはもちろん見どころなのですが、もしかしたら、いつものチャイロイプリンよりも演劇的要素の多い『大人のチャイロイプリン』になる予感もしています。ご期待ください!

CHAiroiPLIN
 
ありがとうございました。
 
インタビュアー 森元隆樹(当財団 演劇企画員)
2023年10月 三鷹市芸術文化センターにて

おどる落語『らくだ』

CHAiroiPLIN おどる落語『らくだ』

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踊る設計図『らくだ』

 

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