iaku《インタビュー》

公開日 2026年03月21日

iaku《インタビュー》
 
初演では、横山さんが自ら演出を手掛けられました。今回の再演にあたり、三鷹では2023年のiaku公演「あたしら葉桜」以来のタッグとなる上田さんに演出をお願いされています。
横山拓也
横山拓也

横山 もともと、2012年の立ち上げから17年『ハイツブリが飛ぶのを』の初演まで、大阪で創作を続け、基本的には上田一軒さんに演出をお願いしてきました。ですので、僕は上田一軒さんの元で演出を学んできたと言えます。2017年の『粛々と運針』で、東京で創作するにあたり、本公演としては初めて、僕が演出をすることになりました。それ以来、東京で創作するにあたっては自身で演出を担当してきましたが、2023年「あたしら葉桜」は一軒さんに演出をお願いしましたし、機会があれば、いつもお願いしたいとは思っています。

 
一軒さんに演出をお願いする理由などありますか。

横山 一軒さんは僕の戯曲を僕よりも読解していて、稽古場で俳優たちと発見や気付きを得ながら、執筆時には想像もできなかった地点まで、いつも作品を導いてくれます。その点で、信頼している演出家なので、今回久しぶりに、自分の一つのターニングポイントになった作品を、預けられるというのは、もう楽しみでしかないですね。

 
再演に当たって、脚本への変更はありますか。

横山 一軒さんとは、すでに去年の11月ぐらいから、テキストの変更点を話し合っています。一軒さんから提案をもらったり、それに対して僕がセリフを改めて考えてみたり……と、もう何回もやり取りをしていて、今は稽古用の台本ができている状態です。

上田一軒
上田一軒

上田一軒(以下一軒) 大きなところ、本質的なところは変わっていないですよね。時代で変わるところもあるのかなと思ったんですけど、そういうところもなくて、かなり普遍的で、時代に左右されない台本です。ただ、今回の作品は、いつもの横山さんの台本にはない珍しい場面があります。そのあたりについて、台本を吟味していく中で、言葉の表現、存在感のような部分を調整してもらいました。

 
確かに、横山さんの他の作品には見られない場面ですね。

横山 そうですね。当時iakuを立ち上げて5年ぐらいでしたけど、新たなところに挑戦した作品でした。台本を一緒に読み直し、そのあたりを今回どのように扱っていくかというところが、書き直しの一番のポイントとなりました。

 
一軒さんの、本作のイメージや、演出のプランをお聞かせください。

一軒 対話を積み重ねていく対話劇という一面があるように思います。それはiakuの変わらぬ方針だと思うんですけど、横山さんにしろ僕にしろ、どちらが演出しても、俳優が役の人物のセリフを言うということの、リズム、濃度というか、俳優が持っている体の真実性、もっと言えば俳優の人生を借りて、役が自身の人生を問われるような形で走っていく、そういう勢いを頼りに、作っていきたいなと思っているんです。もちろん、対話を構造化したような構成は取り入れつつも、奇をてらうようなことをせず、本当にその対話が浮かび上がるような演出をしたいなと、思っています。

 
林英世さんは「あたしら葉桜」にも、ご出演いただいておりました。今回のご出演にあたりましての、意気込みなどありましたら、お聞かせください。
林 英世
林 英世

林英世(以下英世) 私は、初演を大阪で拝見しました。その時は若い俳優さんが演じていましたが、今回、役と同年代の人間が演じるということを活かしたいと思います。この年齢になり、今、私はどうやって死ねるだろうか、ということが気になり、結構リアルに考えます。死ぬということは難しいな、と思っているので……。死ぬのって、難しくないですか、実際の話。本当に、朝ドラの「ばけばけ」の、「のたれ死ぬかもしれないね」っていう歌詞を聴きながら、本当にのたれ死ぬことが許される世の中だったら良いのになって、すごい思うんですよね。どうやっても、生まれたら死ぬまで、この人生、この世の中で、生きなきゃいけないと思うんです。その生き方について、若い時は一生懸命考えたけど、今となっては、死ぬ方を考えているので、この役から、いろいろと教えてもらえるんじゃないか、という気がしています。なるべく気負わず頑張らない感じでやりたいですね。

 
中山さんは、いかがでしょうか。
中山義紘
中山義紘

中山 10年ほど前にiakuとは別の企画でしたが、横山さんの「closet」という二人芝居で英世さんとご一緒しました。その1年後の本公演に、スケジュールの都合で出られなかったんです。客席から、自分のやっていた役が、舞台上で、生き生きと演じられている様子を見て、すごい悔しくて……。終演後、英世さんに挨拶に行ったら、「なんで出なかったの!」と言っていただけたんです。それがずっと心に残り続けていました。それ以来、横山さんの作品を毎回見に行かせていただいて、そのたびに、iakuの作品にいつか出たいです、出たいです、とずっとお伝えしていました。「中山君の特性を分かっているから、機会があれば、いつでも呼びたいと思っているよ」と、優しい言葉をかけてくださっていて、今回、やっと念願の出演ということとなり、すごい気負ってますね、今、僕は。ただ、英世さんは気負わずとおっしゃっていましたので、僕も稽古初日にがちがちにならないように、役をちゃんと咀嚼して、相手役や他の出演者との会話を大事にしたいな、と思っています。

 
今回は、中山さんと久々の共演になる英世さんはいかがでしょうか。

英世 10分くらいのリーディング公演でしたが、すごくまっすぐに芝居をしていて息が合ったというか、面白かったんですよ。ちゃんとやり取りができたので、自分からもアイデアが湧いてきて、すごいやりやすかったんです。なので、思わずそう言ってしまったのだと思います。

 
中山さん、ご自身の役柄や作品全体のイメージをお聞かせください。

中山 僕も初演を大阪で拝見していて、優しい世界というか、優しい布で包まれながら、チクチク、針で刺されるみたいな、現実を突きつけられているような印象を感じていました。命の選択というか、誰しも通る道を考えないといけない局面に立たされた時、今まで流していたような部分を、お互い家族であってもちゃんと話さないと分かり得ない部分は、きっとあると思います。その空気感を、僕の奥さん役の佐々木ヤス子さんと一緒に作り上げていきたいと思います。ただ、一人で考えて決めすぎても違うのかなとも思うので、一軒さんの演出のもと、佐々木さんと夫婦の空気感を作り出せるように、早く稽古がしたいですね。

 
最後に、メッセージをお願いいたします。

英世 今回の作品は、私にとって身近な問題を含んでいます。私は、結婚も子育てもしていません。それを自発的に選択したのかどうか、実はわかりません。でも今、この地点に立っています。日々を暮らしていきながら、私たちは生きて、いつかこの自分をしまわなきゃいけない。結論は出ないだろうけれど、そういうことについて考えてみることがみんなでできればいいなと思います。虚構だけど虚構じゃない何かが、ちゃんと真ん中に見えるようにできたらいいなと思います。

中山 いろんな意見が飛び交うお芝居というか、これはわかるなとか、そこまで言ったら言い過ぎだろうとか、観ている方も一緒に考えられるような作品だと思います。絶対何か持って帰ってもらえる作品になると思いますし、この三鷹の劇場から出て駅までの帰り道、その一本道を歩くのが好きなので、観劇後、帰り道に身近にいる人を考えながらお家に帰っていただける作品だと思います。生身の人間が対話する姿を肌で感じられるような作品だと思うので、ぜひ劇場に見に来てもらえれば嬉しいです。

一軒 この作品は、入り口は日常的なところから入って、少しずつ対話が深まっていきます。対話って、自分が何を正しいとか美しいと思っているのか、アイデンティティを問われるような体験なんですよね。もしかしたら、自分の考えが動くかもしれないという怖さや、あるいは良くなるかもしれないということも含むものだと思います。作中でも、登場人物6人全員が自身を問われるような、自分の生き方を問われるような対話を繰り広げます。そういう僕たちが生きていく中で避けがたい営みを、俳優の体を通して舞台上に出現させる。そして、その空間に居合わせることで、観客の皆さんに自分ごとのようにその葛藤を感じてもらう、そういう舞台になればと思います。人間を見る感性が研ぎ澄まされるような、そういう作品にしたいなと思っています。

横山 この作品は、すごくユーモアもたっぷりあるし、軽妙な会話のやりとりそのものも楽しんでもらえる作品だと思っています。対話でどんどん見せていく、深いところに到達する作品でもあるんですけど、基本的には、ユーモアたっぷりな会話劇という風に捉えてもらっていいんじゃないかなと思っています。 それを新しい演出、新しいキャストで、僕自身が今一番楽しみにしているところがあります。三鷹をはじめ、大阪と新潟と三都市に行くので、春先までみんな元気でやっていきたいなと思っています。

 
どうもありがとうございました。
 
2026年1月 三鷹市芸術文化センターにて
 
iaku『粛々と運針』