公開日 2017年01月11日
【MITAKA ARTS NEWS】 *下方に掲載されているインタビューとは別のインタビューです。
2014年8月に星のホールで初演された『わたしの星』は、
オーディションに合格した10人の高校生だけがCASTとして出演し、
STAFFも、面談などを経て、プロの指導のもと、高校生5人が可能な限り携わった舞台として上演され、
フレッシュで、完成度の高い舞台が創出されました。
今回、その『わたしの星』を2017年8月に再演するにあたり、高校生向けのワークショップ、
そしてオーディションの開催を控えた柴幸男さんに、お話をうかがいました。
まずは、柴さんの『わたしの星』再演に寄せる気持ちを教えてください。
『わたしの星』は、いつかまた、高校生たちと一緒に作ってみたいと思っていましたので、再演が決まった時は嬉しかったですね。前回、高校生との創作期間はすごく面白かったし、その後日本中で、いろいろな高校が上演してくれて、そして僕自身も、高校演劇の審査員をさせていただくことも増えてきたので、そういった時期を経て、また「わたしの星」を上演できるのは本当に嬉しいです。作品内容は、すごく大きく変えることはないと思いますが、演出的な面とか、いろいろ更に面白くすることができるのではないかというアイデアも湧いてきているので、新しい高校生との出会いにより、どんな作品を生み出すことができるか、とてもワクワクしています。
初演の舞台作りの際に、強く記憶に残っていることはありますか?
- 前回公演の稽古風景
思っていたよりも、高校生たちが普通にキャスト•スタッフとして、大人と芝居を作る時と変わらぬ手応えで頑張ってくれたなあと思います。だから途中からは、みんなを一俳優として見ていて、高校生であるという意識がどんどん薄くなっていったような気がします。前回、一人一人が面白くて、皆とても魅力的だったので、今回、また違う高校生たちの個性が集まって、戯曲にどんな相乗効果をもたらすのか、本当に楽しみです。あと、作品の構想を練っている時に「音楽と舞台の融合とかできたらいいなあ。でも果たして、劇中の生演奏なんてできるのかなあ」なんて少しだけ思っていたのですが、前回は偶然、楽器ができる人が多くて、想像していた以上に音楽と舞台の融合が面白かったので、今回も楽器経験のある人が多かった場合は、もう少しだけ、音楽との融合を試みてもいいかなと考えています。でもだからといって、楽器未経験だからオーディションに落ちるのかしらなんて考えないで欲しいです。前回も楽器ができない人もいましたから、その点はどうか気にしないでください。
高校生とお芝居を作っていた時に、一番強く感じたことはなんですか?
演技をするのが楽しいとか、お芝居をすることが楽しいという気持ちに、直に触れる日々をおくれたということですね。それはすごく楽しかったし、いつの間にか自分も同じ気持ちになれました。
前回のCASTは「女子9人に、男子1人」という組み合わせでしたが、今回はいかがですか?
オーディションに来てくれた高校生の個性を見ながら考えていきたいので、前回の人数構成にはこだわらず、変えてもいいと思っています。あくまでも“誰とお芝居を作るのか”につきます。男女比もそうだし、人数も。だから12人になったり、8人になったりするかもしれませんし、大逆転して男子校の話になるかもしれません(笑)。なので「男は1人だけかあ」なんて思わず、男子にも積極的にチャレンジしてほしいですね。前回、高校1年生役は女子3人でしたが、そこだけ全員男子とかでも作れますしね。柔軟に考えていきたいです。
では「まずは、ワークショップを体験してみようかな」と思っている高校生の皆さんにメッセージをお願いします。
- 前回のワークショップ風景より
演劇経験とかは一切気にしないでほしいです。部活で全く違うことをやっていたり、普段何もしていなくて帰宅部という人でも大歓迎です。演劇をするということはどういうことか、演劇を作っている人、すなわち今回は柴幸男という人がどういう人なのかとか、三鷹のホールの人を見て、こういうふうに演劇と関わっている人がいるんだなあとか、知ってもらえるだけでも有意義だと思いますので、“ちょっと遊びに行ってみるか”という気持ちでもいいので、ぜひ参加してほしいです。そして参加した後で、もしも「出演してみたい」と思ったらオーディションを受ければ良いと思うし、(オーディションに)申し込まなかったとしても、ワークショップを十分に楽しんだ上で、夏になったら、同じ高校生たちがどんなふうに舞台に立っているのか、見にきてもらえたらと思います。
次に、「オーディションに参加しよう」と思っている高校生にメッセージをお願いします。
仮に台本があっても、(セリフをちゃんと言えるというよりも)舞台上での人と人とのコミュニケーションだったり、お互いの呼吸だったりを重視しているので、それは難しさも伴うのですけれど、その難しさも楽しんでみるという体験をしてもらえたらと思います。そして、前回の公演でも、合格者の中に“お芝居経験がない”という人が何人もいましたから、オーディションにおいても、過去の演技経験などは一切気にせずチャレンジしてほしいです。だから“個性が強い方がいいのかな”とか“演技が上手い人が選ばれるのかな”とかはあまり考えずに、受けてみて欲しいです。逆にいうと、自分でまだ気付いていない個性というものがあると思うんですね。もちろん、将来的に役者を目指していたり、演劇の世界にもっと触れたいと思っている人にはぜひ申し込んでもらいたいですね。そういった人は、オーディションに参加することで、本気で演劇に取り組んでいる同世代の人がこんなにいるんだなと、大きな刺激をもらえるのではないかと思います。いずれにしても、演技経験がある人もない人も、少しでも興味が湧いたり、気になったりしたら、どうぞチャレンジしてほしいです。もちろん事前に渡されたセリフを覚えてくるくらいの準備はしておいて欲しいですけど、実際には当日私と一緒に、呼吸を合わせていくことが一番大事なので、あまり「準備をしなくては」とか思わずに受けてもらえたらと思います。そして、仮に落ちた場合でも、落ちたからといって実力がないとか魅力がないとかは思わないで欲しいです。僕自身、いろんな演劇の大会や賞に落ちてきた人生でしたし、だから、今回はたまたま選ばれなかったんだと思って、演劇を続けて欲しいと思うし、何かの縁があって、いつか僕と一緒に、芝居ができる日があればいいなと思います。
オーディションに合格した高校生たちとは、4月の顔合わせを経て、5月から稽古が始まりますね。どんな日々にしたいとお考えですか?
- 前回公演の稽古風景
演劇をするということに対して、僕ができる限りの、最高のセッティングをするということ、すなわち“演劇を思いっきりする”ということだけに集中できる環境を用意して、一緒に頑張っていきたいと思います。ですから稽古中に、高校生自身が演劇的にトライしたいと思うことや、クリアしていきたいことなどがあれば、それを実現できるようにしていけたらと思います。
そして今回も、「高校生スタッフ」を募集しますね。
- 前回の高校生スタッフの作業風景
前回、高校生スタッフには、稽古中、そして本番中も、いろいろな仕事をしてもらったのですが、特に「稽古の記録を毎日作ってもらう」作業をしてもらって、それは非常に有意義でしたし、高校生スタッフとの共同作動は想像以上に楽しかったです。その上で、今回は演出部と制作部の2つに分けての募集です。まず演出部は、僕と一緒に舞台を作っていけたらと思います。台本を書くのが好きだという人には、実際にセリフを書いてきてもらって、僕と意見を出し合いながら台本を作っていけたらということも考えています。また、制作部は、劇場でお客様と対応していくとはどういうことか、そのすべてを感じ取ってもらえたらと思います。将来的に劇団で働きたいとか、劇場で働きたいとか思っている人には、とてもいい経験になると思います。大学生だとインターンシップというのが最近は多いですが、高校生でプロの演劇の現場を、制作として実際に体験する機会は少ないのではないかと思うので、ぜひ興味があったら申し込んでみてください。こちらも、経験の有無は問いません。
それでは、最後にもう一度、高校生の皆さんにメッセージをお願いします。
新しいメンバーと作っていくので、その創作作業の中で、“再演なのだけれど、新しい『わたしの星』が出来るのではないかな”という予感がしています。
オーディションに合格した高校生たちとは、4月の顔合わせを経て、5月から稽古が始まりますね。どんな日々にしたいとお考えですか?
- 前回の舞台写真 撮影:青木司
本日はありがとうございました。
インタビュアー 森元隆樹(当財団 演劇企画員)
2016年10月28日 三鷹市芸術文化センターにてインタビュー