公開日 2026年05月20日

──どのようなお話か改めてお聞かせいただいてもよろしいでしょうか。
福名 共依存だということに気付かずに、スピリチュアルにはまってる母親とそれに寄り添う娘を取り巻く人間模様を描いた物語となっています。
──ありがとうございます。今回、4年ぶりの再演となりますね。
福名 初演を書く時から、再演をするための作品にしようと思って書き始めたんです。そろそろ再演のタイミングかなと思い、当時二十代だった岡本も30代になったことで、キャスティングを刷新しようと思いました。配役をどうしようみたいなところから始まった感じです。また、三鷹の星のホールは初演の会場よりもかなり広く、さらに自由度が高まっているので、抽象的な舞台美術に挑戦したい気持ちが湧き、今回、舞台美術を山本貴愛さんにお願いをしました。新しいキャストやスタッフと新たな会場に向けて作り直すことで、どうやって立ち上がっていくのか、すごい楽しみにしています。
──初演時において既に、完成された強度のある作品だと感じました。このたびキャストを新たにされて、舞台美術にも山本貴愛さんを迎えられ、さらに洗練された舞台になることと思いますが、再演に向けて配役やストーリーはどうなりますか。
福名 今回、母親の役を渡辺真起子さん、その娘役が仲さん、母親の弟役が松下さんで、松下さんのパートナー役が岡本です。そして、渡辺さんの同僚役を松尾さんにお願いしています。登場人物や大筋は変えずにいきたいと思っていますが、今回読み返して、やっぱりセリフがまだちょっと荒削りだなという印象があるので、そこを精査して、なるべくキャラクターの心情に沿った物語に書き換えたいなと思っています。
──初演の魅力も忘れ難いですが、渡辺真起子さんをはじめ素晴らしい俳優陣による再演によって、また新しい魅力に出会えると思うと、期待が高まりますね。今回ご出演される皆さんの、ぱぷりかとのエピソードがあればお聞かせいただけますでしょうか。
松下 以前ぱぷりかに出演した知り合いの俳優に、自分も福名さんのワークショップに参加してみようと思っていると相談したところ、信頼できる方だよと教えてもらいました。ぜひご一緒したいと思っていたので、安心して、福名さんのワークショップに何回か参加させていただいて、それが出会いになりますね。今日、福名さんの岸田國士戯曲賞受賞作を持ってきたのですが、読ませていただいて、短いセリフでつないでいくことで、登場人物の関係性について、お客さまに想像を委ねる作品になっていると思いました。読み進めるうちに湿度をすごく感じたことも印象的です。湿度って、舞台の台本にあまり感じることがないんですけど、その作品にはすごく感じました。もちろん、話が水に関係しているというのもありますが、湿度と匂いを感じて、すごく面白かったです。
仲 私は、2023年に演劇ユニットろりえが主催した舞台で、ろりえの奥山さんの演出で、福名さんが脚本を提供された「かわいい妹」という作品に主人公として出演させていただいて、それが出会いです。
福名 奥山さんから、オムニバス形式の夏祭りみたいな舞台をしたいということで、脚本
提供のオファーをいただきました。その際、奥山さんから出演者のリストをいただき、奥山さんの演出ということも考慮しながら決めさせていただきました。
仲 その舞台の直後にタイミングよく、ぱぷりかの舞台「柔らかく搖れる」の再演を観に行かせていただいたんです。私は、それまで、余白がある舞台を苦手と感じていたところがあって、というのも、そういう舞台を観た後、委ねられすぎてしまうように感じるからです。ネガティブな性格からなのか、本当にこの話はこういう受け取り方で良かったのかなって不安になってしまっていたんです。ただ、福名さんの作品はなんと言うか、私にとって、余白ではない部分の要素が揃っていて、自分で考えるのがすごい楽しかったんです。この時、この俳優さんはどういう風に思って演じたんだろうと考えたり、セリフのやり取りの中で、どういう気持ちになったんだろうとか、本当はどう思っているんだろうとか考えることを、久しぶりにすごい楽しく感じたんです。ですので、私にとって福名さんの作品は、余白が好きになったきっかけと言うか、新しい扉を開けてくれた、私の好きが増えた作品だったんです。ろりえで演じさせてもらった作品がすっごい面白かったので、もっとたくさん福名さんの作品を見たいなというタイミングで、ぱぷりかの舞台を客席から観させていただいて、良かったなと思っています。ありがとうございます。
松尾 僕は、兄貴と母も福名さんにお世話になっていまして…。
福名 私も松尾さんも同じ広島の出身で、私が「柔らかく搖れる」で受賞した際、広島にいらっしゃる松尾さんのお母さまに、お仕事の関係でインタビューしていただいたんです。なので、一番最初にお会いしたのはお母さまなんです。その時、息子が2人とも東京で役者をやっているとお聞きしていました。その後で、潤さんと、お兄さんの敢太郎さんとお会いするんですよね。
松尾 はい、そうなんです。兄弟2人とも福名さんにお世話になってるので、下手な芝居はできないなっていう、変なプレッシャーがあります(笑)。
福名 演劇引力廣島さんのプロデュース公演に呼んでいただいた時に、お兄さんの敢太郎さんがオーディションを受けに来てくださり、ご出演いただくことになりました。その公演には、岡本も一緒に出演しています。その時、潤さんが東京でやっているというお話を聞いていて、いつか会えたらいいねみたいなことを言ってたら、今回、こうやってご出演いただけることになりました。
松尾 嬉しいです。ありがとうございます。僕は、それこそ、この前の 11月公演(2025年ぱぷりか第8回公演『人生の中のひとときの瞬間』)を拝見して、その、なんて言うんだろう、すごいありふれた日常感というか、どこにでもあるようなリアルさを感じて、すごい胸が痛かったんです。福名さんは、きっといろんな人をちゃんと見ている方なので、いつか僕の化けの皮が剥がれるのではないかと思うとすごく怖いのですが、ありのままでぶつかりたいなと今は思います。
──皆さま、ありがとうございました。ぱぷりかとの出会いが皆さん異なりながらも、福名さんやぱぷりかに魅力を感じて集まり、今回の作品に取り組まれるのだと分かりました。その中で、岡本さんにとっては2度目の出演となりますが、どのような思いでしょうか。
岡本 初演が4年前なので、自分自身が当時とだいぶ違うと思っています。お芝居もちょっと変わったなって自分では思いますし。それに初演とは違う役での参加なので、物語の中での役割や立場が変わっていますから、その部分を新たに全うしたいです。私の役も違いますが、他の出演者も全員新しくなっていますので、初演とは結構違う作品になるんじゃないかなって思っています。母娘役が軸にいて、そこにどういう風に影響を与えることができるのか、逆にどんなものをもらえるのかと想像していて、とにかく楽しみでドキドキしています。
──再演で新たな魅力が吹き込まれるのは、非常に楽しみですね。初演で岡本さんが演じた役を今回、仲さんが演じられますね。
仲 そうなんです、初演を拝見した際、岡本さんがとても素敵だったので、それを全部なくすのでも、ただなぞるのでもなく、壊さずに優しく受け取って、そこからまた違う形に作り変えるじゃないけれど、新たに作っていけたらいいなと思います。
──仲さんの演じられる新たな娘役が今から大変楽しみです。演じる俳優によって、ある役柄の魅力が変化を楽しむというのは、再演ならではの楽しみのひとつですね。
福名 初めから再演を目指して、登場人物を少なめにして、いろんなところで再演できるようにしたいと考えて書いた作品です。岸田國士戯曲賞受賞後の公演で、プレッシャーがすごかったので、もうこれで出し尽くすという気持ちで、自信を持って書かせてもらいました。本番で、お客さまの反応を見た時に、やはり再演しなきゃいけない作品なんだと改めて思いました。
──公演がますます楽しみになりました。そして、すみません、どうしても三鷹のインタビュアーとして触れさせていただきたい点がもう一つありまして、松尾さんは、2017年に、星のホールで上演した、劇団ままごとによる、高校生だけが出演して、スタッフにも高校生が参加する公演、柴幸男さんの「わたしの星」にご出演いただいたんです。それから8年経ち、立派な俳優となって戻って来ていただきました。
松尾 ずっと楽しいからやってるみたいなところはあるんですけど、日々周りの大人たちから刺激を受けて、もっともっともっと頑張っていかないといけないなって思って続けています。
福名 私も当時観ていて、これ本当に高校生かな、みたいな感覚でした。お芝居やって、演奏もして休みなく出演者がずっと動いていて、最後まで飽きずに観ていました。これをどう演出したのか想像もできなくて、改めて柴さん恐ろしいな(尊敬の意味を込めて)と思いました。
──当時の松尾さんの舞台をご覧になった方にも、ぜひ足をお運びいただきたいです。それでは、皆さん、最後にメッセージをお願いいたします。
岡本 福名の脚本からは、はたから見ると理解されないような人も、どこかで何かを抱えているかもしれない、そういう人へ大丈夫だよと声を掛けるような印象をいつも感じます。何か一つ安心感というか、ちょっと頑張ろうという気持ち、ワクワクすると同時に優しい気持ちを持って帰ってもらえるような作品にしたいなって思っています。初演とは全く違う質感の作品になると思うので、初演をご覧になった方も、初めての方も、ぜひ皆さまこぞってご来場ください。
松尾 稽古がまだ始まっていないので、皆さんと一緒にどういう芝居をしていくのか、分からない部分もありますが、観に来てくれる方に、こう寄り添うというか、背中をそっと支えてあげられる作品にできればいいなと思っています。
仲 どれだけ好きな家族でも、あるきっかけで、急に仲違いしちゃうとかって本当あると思うんです。それがほんと些細なことで起きちゃったりすると思うんですよ。でもそういう人たちが、周りにたくさんいないってことは、誰もが、それを少しずつ避けて生きているのかなと。今回この舞台では、そこでちょっと衝突が起きて、葛藤を抱えながら、物語が進んでいくんですけど、その葛藤を客席から見た時に、私は怖いって思っちゃったんですよ。私がそうなっちゃうかもしれないっていう怖さと同時に、今が本当に幸せなんだなって感じたんです。それは、自分が現実の周りの人と衝突せずに、ちゃんと向き合えているからなのかなと、気付かせてくれた作品だからだと思うんです。なので、お客さまにも、少しでも今自分が幸せだなって思えてもらえたら嬉しいですし、そういう作品にできたらいいなと思っています。ぜひ見ていただきたいです。お待ちしております。
松下 家族って、適度な距離をとることが本当に難しくて、逃れられないもので、そこに余白があると思うんです。その余白の部分を観客と共有できるように、福名さんや共演者の皆さんと一緒に作っていければと思ってます。
福名 今回の再演で、改めて、自分の家族や、自分自身と向き合った作品なので、ご覧になるお客さまにもどこか共感していただける部分があるんじゃないかと思っています。ひとりぼっちな気持ちになっている人に、自分は一人じゃないかもしれないと思ってもらえるように、そっと寄り添うことができるような作品になったらいいなと思っています。小さな救いじゃないですが、小さな光みたいなものをお客さまが見た後に感じてもらえるように、皆さんと一緒に、良い作品にしていきたいと思っているますので、ぜひ劇場にお越しいただけますと幸いです。








